研究概要 |
まず,シクラメンのアントシアニン生成に関連する遺伝子を単離し,シクラメンのDFR,ANS,3GTに相当するpCypDFR,pCypANS,pCyp3GTのうち,シクラメンの花弁における白色発現を左右するpCyp3GTと考えられるものにはいくつかのコピーがある可能性が示され,それぞれどれがどの基質に作用するか検討する必要があると考えられた. 次に,雑種性および倍数性検定により,本研究で行われた複色花および色変わり花園芸品種と野生種との種間交雑において,全ての交雑組み合わせで種間雑種が得られており,複色花品種を用いた一部の交雑雑組み合わせで複二倍体が,色変わり花品種を用いた一部の交雑雑組み合わせで複二倍体と倍加されていない種間雑種のキメラ個体が得られていることが明らかとなった. さらに,複色花および色変わり花園芸品種と野生種の種間雑種の開花個体の花色および花色素について調査を行ったところ,F_1('パピヨン'×C.purpurascens)およびF_1('プルマージュ'×C.colchicum)において,種子親の複色花園芸品種と同様の複色花を有する個体が得られた.また,F_1('ピアス'×C.hederifolium(白色花))の花色および花色素を調査した結果,開花当日にはほとんどアントシアニンを花弁に含まないものの,開花7日後にはアントシアニンであるマルビジン3,5ジグルコシドを生成し花弁の色変わりを示す個体が認められ,色変わり花園芸品種と野生種との交雑においても色変わり形質が遺伝することが示唆された.これらの結果から,異なる種類のゲノムを有する種間雑種においても,色変わり花および複色花形質が遺伝し,種間雑種においても,親の園芸品種と同様の特異的な花色発現を示す個体が得られる可能性があることが明らかとなった.
|