本研究は、アスパラガスの長期連作圃場において発生する低収要因を解明し、その主要因と考えられているアレロパシー作用に注目し、アスパラガスの持つアレロパシー活性に関する諸要因を明らかにして、わが国の産地で直面している連作障害の回避技術を確立するものである。 研究初年度(平成21年度)は、アレロパシー物質の単離・精製に有効であると考えられる無菌的生物検定系の開発を行い、その検定系へ放出される標的物質(群)の量が、被検定植物であるアスパラガスの実生へLEDを照射することで増加することを見出した。さらに、標的物質(群)の放出動態は、特定領域の光質によって変動することを明らかにした。これらの研究成果は、関連学会において公表するとともに、国内外の学術雑誌に論文を投稿中である。 ここで開発した実験系を活用して得られた標的物質(群)について、ODSカラム及びHPLCによる解析を行ったところ、各種有機酸と糖質が検出された。これらを同定し、それぞれについて生物検定を行った結果、アレロパシー活性を有していないことが明らかとなった。そこで、キャピラリー電気泳動によって抽出後サンプルの網羅的解析を行ったところ、多量の塩類が検出された。同定した各種塩を添加した生物検定の結果、極めて強いアレロパシー活性が認められ、これら塩類がアスパラガスの連作障害を招いているものと推察した。アスパラガスの種子を用いて生物検定を行っても同様の強活性が認められたことを考慮し、現在、ハウスにおけるプランターでの再現試験を実施するべく、数百規模のポット栽培によりアスパラガスの実生育成を行っている。
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