研究概要 |
我が国の野生種を利用したブルーベリーの育種と機能性の改善を目的として以下の研究を実施した.先ず,収集したスノキ属野生種の倍数性とゲノムサイズをフローサイトメーターで解析したところ,14種中11種が二倍体,オオバスノキとクロウスゴおよびクロマメノキはそれぞれ四倍体と六倍体と推定された.なお,二倍体11種の核DNA含量は,ツルコケモモの1.00pg/2Cからアラゲナツハゼの1.19pg/2Cまで変異がみられたが,有意差は認められなかった.また,常緑性が4種で他の10種は落葉性であり,果実はいずれも1g以下と小さいが,クロマメノキは比較的果実が大きいことを明らかにした.また,果色は黒色のものが多いが,ウスノキの様に赤色の種もみられた.これらの果実の品質や機能性について分析したところ,スノキは果実こそ小さいものの,品質,機能性に富んだ種であり,果実品質の面ではシャシャンボが,機能性の面ではナツハゼも優れた素材であることが推察された.さらに,一部の二倍体野生種と栽培種のブルーベリーとの交雑を行い,ナツハゼおよびシャシャンボを花粉親とした貴重な種間雑種と思われる数系統の実生個体を育成している.また,二倍性野生種7種と著者らが育成したクロマメノキとハイブッシュブルーベリー'ブルークロップ'との種間雑種であるKB4系統(五倍体)の茎頂を培養,増殖後,その一部についてコルヒチン処理を行った.その結果,今後我が国の野生種を利用した育種にとって貴重な素材と成り得るナツハゼの四倍体とアラゲナツハゼおよびナガボナツハゼの二倍体と四倍体のキメラ系統およびKB4系統の十倍体を獲得することができた.さらに,これまでに育成したクロマメノキとラビットとアイブルーベリーT100との交雑より得られたKT8系統のDNA解析を行った結果,8系統はいずれも種間雑種であることが確認され,中でもKT-9は果実が大きく,品質が優れ,且つ機能性に富む有望な系統であることなどを明らかにした.
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