研究概要 |
我が国の野生種を利用したブルーベリーの育種と機能性の改善を目的として以下の研究を実施した.収集した野生種の茎頂を培養し,15種中12種について増殖系を確立した.増殖したシュートを切り取り,in vitroでコルヒチン溶液に浸漬した後,再度培養することによりナツハゼ,アラゲナツハゼおよびナガボナツハゼ(いずれも二倍体)の染色体倍加系統である四倍体を作出した.これらの四倍体は順化後,ラビットアイブルーベリー'ホームベル'に接ぎ木し,早期育成を図っている.その他の野生種についても順次コルヒチン処理を行い,実験を継続中である.また,二倍体野生種と栽培種(四倍体および六倍体)との種間交雑を行った結果,栽培種にナツハゼ,シャシャンボおよびスノキを交配することにより極めてわずかであるが完全種子が得られ,それらを層積後播種することにより実生が得られた.得られた実生は'ホームベル'に接ぎ木することにより早期育成を図かり,可能なものについて葉の形態およびRAPD法によるDNA解析により雑種性を判別した.その結果,'プルークロップ'×ナツハゼより得られたBNa2系統が種間雑種であることが明らかとなった.また,フローサイトメーターによる倍数性解析の結果,BNa2系統はいずれも四倍体と推定されたことから,花粉親として用いた二倍体野生種の非還元雄性配偶子が受精して生じたものと推察された.次に,クロマメノキとハイブッシュブルーベリー'ブルークロップ'との種間雑種であるKB4系統(五倍体)の茎頂をin vitroでコルヒチン処理して得られた十倍体は,元の五倍体と比べて節間長が有意に短く,葉の大きさも有意に小さく,植物体が矮化した.また,これら十倍体の葉の各組織の細胞は元の五倍体のそれらより大きく,気孔も大きかったが,気孔密度は低くなる傾向を示した.
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