研究概要 |
ブルーベリー栽培種数品種とスノキ属野生種数種について,果実を果皮と果肉に分離して成分分析を行い,それぞれの機能性を比較した.その結果,総ポリフェノール含量は,栽培種,野生種共に果肉に比べ果皮で著しく高い値を示した.また,果皮ではHBとSHBの各品種に比べRBの各品種で高く,野生種の中ではナツハゼがRBと同程度に高い値を示した.一方,果肉の総ポリフェノール含量もRBの品種で比較的高かったが,野生種5種はいずれもRBの品種に比べても高い値を示した.栽培種の果肉にはアントシアニンが含まれなかったが,野生種ではツルコケモモを除き,いずれも果肉中にもアントシアニンが含有されていた.果皮のアントシアニン含量は,栽培種では総じてRBの品種で高い傾向がみられた.野生種では赤色果のツルコケモモで低い値を示したが,ナツハゼとスノキで高く,特にナツハゼでは他の野生種に比べ有意に高い値を示した.なお,野生種の果肉中のアントシアニンの種類は果皮に比べて少なかったが,果皮と異なる種類は検知されなかった.このように,今回果皮と果肉に分けて分析した結果,これまでと異なり果皮では必ずしも野生種で機能性が高くはなかったが,野生種の中には栽培種に比べ,果肉中にポリフェノールやアントシアニン含量が高いものがあり,果実全体の機能性の高さに関係しているものと推察された.次に,これまでに誘導されたナツハゼ3系統とアラゲナツハゼの倍化系統について,FCMにより倍数性を解析したところ,いずれも四倍体を維持していることが推測され,それらの1系統の新梢先端細胞の染色体数を観察したところ,48本の四倍体であることが確認された.また,開花に至ったナツハゼ倍化個体2系統の花粉を調査した結果,四分子花粉の大きさは二倍体のそれに比べ四倍体で大きかった.また,稔実率はいずれも85%以上と高かったが,発芽率は二倍体野生種でも0.8~3.0%と低く,倍化系統では0.3%と0.1%と低かった.これらの倍化系統は,発芽率が低いものの育種には利用可能と思われた.
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