平成22年度の研究目標は、低温要求性に対するジベレリン感受性の解明および生育および花芽分化に関与するジベレリンメタボロームステップの特定である。低温要求性については、低温処理期間の増加に伴い出蕾枝率が増加し、出蕾所要日数は減少したことから、低温は出蕾の重要な要因である事が再度確認された。またGA無施用区ではGA生合成阻害剤であるUCZ施用に伴い出蕾枝率が減少し、出蕾所要日数が増加したことから、出蕾には内生GAが関与していることが確認された。低温0週ではGAを施用しても出蕾は見られず、低温8週に比べ12週の方がGA施用による出蕾枝率の増加が著しかったことから、低温によりGA感受性が増すことが示唆された。しかし、GAを施用する低温8週の区ではUCZの施用濃度の増加により出蕾枝率が低下し、出蕾所要日数が増加したのに対し、GAを施用する低温12週の区では出蕾枝率と出蕾所要日数に対するUCZ施用の影響は無かった。以上から、低温処理期間が短く開花のための低温充足度が不十分であれば開花はGAの内生量に依存し、低温処理期間が長く低温充足度が十分であれば開花はGAの内生量には依存しないことが示唆された。一方、ジベレリンメタボロームにおけるGA内生量は、GA_<53>は低温処理終了時から低下し、GA_<19>、GA_<20>は低温処理終了7日後から高くなった。またGA_1も低温処理終了7日後から高くなり、低温処理終了14日後に最大になった。このことから低温処理終了後からGA_<53>がGA_<19>、GA_<20>、GA_1と代謝され、低温処理終了7日以降に見られた活性型GAであるGA_1の蓄積が低温処理終了21日以降に見られた出蕾に直接関与したと考えられる。このように、低温処理終了後の20位酸化酵素と3位酸化酵素遺伝子の強い発現がジベレリンメタボロームの推進力として働き開花を引き起こすと推定された。
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