本研究は、禅の産物である日本中世の禅宗庭園に関して、禅の産物を研究する造園学と宗教学及び美術史の研究成果との統一的見解を得るために、禅宗庭園を取り巻く成立背景の一端を明らかにした。研究成果では以下の知見が得られた。1)造園学と宗教学及び美術史の研究成果を比較研究した結果は、禅宗庭園が中国官僚の士大夫の文化的解釈に影響された観点に立った研究アプロ-チの可能性を得た。ここに禅の産物としての横断的研究の方向性を見出せた。2)義堂周信の『空華日用工夫略集』を対象とした文献調査の結果、14世紀後半の禅宗庭園の用途は、(1)座禅修行の場、(2)詩作の場、(3)花見や眺望の場であった。そして、3つの用途は重層的な使用であった。この庭園利用は、文学の詩的情緒性によっても認識されており、そこには禅の思想ではなく、中国の文学と思想にも影響された知見を見出せた。
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