日本に現存する三倍体センノウと日本に自生するセンノウ属について類縁関係を明らかにし、三倍体センノウの起源を解明することを目的に、三倍体センノウに近縁のエゾセンノウおよびオグラセンノウの自生地調査を北海道および岡山県で行い、解析用試料を収集した。また、三倍体センノウの起源を探る上で重要と考えられる中国に自生するセンノウ属植物の調査を中国の浙江大学と共同で実施し、DNA解析用試料を収集した。これらの試料とすでに導入済みのセンノウ属植物を用いて、センノウ属の類縁関係を明らかにするためにDNA解析を開始した。 一方で、三倍体センノウの自殖後代の染色体構成とその頻度を明らかにするために、すでに獲得している自殖後代95個体の約2/3にあたる66個体の染色体数を明らかにした。その結果、自殖後代の染色体数は24~55であることが明らかになり、二倍体(2n=24)および三倍体(2n=36)に相当する染色体数を持つ個体も確認された。この結果については染色体学会で報告を行った。また、開花に至った自殖後代について、花や葉の形態などの表現型や花粉稔性について調査を実施し、表現型や花粉稔性にばらつきが認められている。さらに、解析の精度を高めるために、人工授粉と胚珠培養の組み合わせにより、新たな自殖後代を獲得している。 また、三倍体センノウを育種素材として利用するために、人為的に近縁野生種との人工交配を行い、胚珠培養を実施した。その結果、これまで獲得することができなかったフシグロセンノウとの雑種を獲得することができたが、これまでに得られているオグラセンノウとの雑種同様、すべてが葉緑体欠損株であった。
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