日本に現存する三倍体センノウと日本及び中国に自生するセンノウ類の類縁関係を明らかにして、三倍体センノウの起源を探るために染色体解析、DNA解析、標本調査、自殖後代の形質調査および近縁種間の交雑親和性について研究を行った。 三倍体センノウの自殖後代の中で、昨年度核型分析ができなかった個体について、染色体の観察を行い、生育不良の個体を除く個体の染色体数を明らかにした。染色体数は24から50まであり、二倍体相当の24の染色体を持った個体は花粉稔性が比較的高いことが明らかになった。成果の一部は染色体学会作成2011年カレンダー図案に採用され、センノウの植物体・染色体の写真及び解説文が掲載された。DNA解析では、今年度新たに収集したセンノウ属植物の葉緑体DNAの解析を行い、これまでに収集したセンノウ属植物のPS-ID配列が明らかになった。 自殖後代については、前年度までに得られている個体について、草姿をはじめ花型、開花期、花色などの表現型や花粉稔性について調査した結果、それぞれの形質において変異があることが明らかになった。中には匍匐性や矮性の個体も見出され、園芸的利用が期待できる。さらに、三倍体センノウは鮮紅色の花色であるが、オレンジ色の個体が2個体見出された。この個体については色素分析の結果、シアニジンタイプのアントシアニンが減少し、ペラルゴニジンタイプが増加していることが明らかになり、アントシアニン合成経路の遺伝子の一部に変異が生じたと思われる。 また、類縁関係を明らかにするために、センノウ以外のセンノウ属植物の種間交雑を行い、胚珠培養を実施した。前年度までに得られていた種間雑種はほとんどが葉緑体欠損株であったが、マツモトセンノウとエンビセンノウの交雑による種間雑種の中に2個体ではあるが、葉緑体を持った個体が得られ、園芸的利用が期待される。
|