植物病原ウイルスであるレンゲ萎縮ウイルス(MDV)ゲノムDNAの詳細な機能解析を行い、有用遺伝子を特定の植物組織で高率に発現するベクターの構築を目指すものである。MDVのゲノムは8種の環状一本鎖DNAから構成され、各DNAは単一の遺伝子をコードしているが、それら遺伝子の多くは機能が不明である。一方、MDVのDNAから単離したプローモーター領域には非常に強いプロモーター活性があることが分かっている。ウイルス遺伝子の植物細胞における転写制御機構と宿主の抵抗性(ジーンサイレンシング)回避の機構、および昆虫による媒介の分子機構を詳細に調査し、これらに関与するゲノム領域の改変・制御を試みる。MDVゲノムDNAのうち、DNA-U4のプロモーターについては諸性質を含めて基本的な活性が調査されていないため、今年度はDNA-U4のプロモーター領域の同定とクローニングを行った。サイレンシング抑制については、既にMDV DNA-U2がコードするタンパク質が局部的なmGFPのサイレンシングを抑制することを確認している。今年度はU2タンパク発現条件下におけるGFPのmRNAとsiRNAについてノーザン解析によるGFP-mRNAの転写を定量的に解析した。DNA-U4は最近同定されたゲノムDNAであり、遺伝子の機能は不明であるが、推定されるプロモーター領域の配列は外被タンパク質をコードするDNA-Sに最も類似しており、DNA-Sプロモーターと同様に遺伝子の発現が、ウイルス感染後期に増大するように制御される可能性がある。DNA-U4についてはこれまでに国内各地から採集したMDV分離株間で塩基配列にかなりの変異が見られている。こうした遺伝的変異についてさらに調査を行ったうえで、プロモーターを単離し、DNA-SプロモーターとともにGUSレポーターとともに形質転換植物体を作製し、遺伝子発現機構を解析する。
|