研究概要 |
本研究は、植物病原ウイルスであるレンゲ萎縮ウイルス(MDV)ゲノムDNAの詳細な機能解析に基づいて、有用遺伝子を植物組織で高率に発現するベクターを構築することを最終的な目的とする。MDVのゲノムは8種の環状一本鎖DNAから構成され、各DNAは単一の遺伝子をコードしているが、それらの多くは機能が不明である。クローン化したウイルスDNAをアグロバクテリウム菌を介して植物へ効率的に導入する‘全身感染系の確立’は本研究の成否にかかわる重要な技術的条件である。この実験系の基礎はほぼ確立しているが、感染効率が低く、この原因としてウイルスゲノムDNAに変異が含まれていることが考えられたため、H23年度、新たにMDV野生株(MDV-N11)を分離し、H24年度にゲノム配列配列を詳細に解析し、N11株ゲノムを構成する各々のDNAについて異なる10クローン以上の配列を比較し、変異を含まない主要配列をほぼ特定した。最終年度の今年度は、この感染系実験に8種のゲノムDNAのみによる感染系以外に、ゲノムに付随するサテライトDNAを加えた感染系を構築するため、N11株に含まれる3種類のサテライト様DNA(C2, C3, C10)について各々最低10個以上の異なるDNAのクローニングと配列解析を行い、変異を含まない配列を特定した。これらについて現在感染実験を行っている。また、ゲノムDNA中のDNA-U4について5’RACE解析を行い、転写開始点を解析したほか、バングラデシュのマメ科作物からMDVを同定しその完全なゲノム配列を解析した。これは日本国以外で同定されたMDVゲノム構造の初報告となる。
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