地域・国の持続的発展の支援のために食産業を基盤から改善する目的で、「農家学」「農家技術学」「市民科学的農学」の確立をめざし具体的技術と手法の開発を実施してきた結果、本年度は以下のような成果を得た。 (1)ハダニ増殖のための環境条件および休眠特性の解析 本課題で開発・製作された小型大量飼育システムを利用して、カンザワハダニの休眠機構と光条件の操作による休眠防止条件を確定した。この条件は将来の本種による被害防止につながる技術である。これらの成果は学会発表とともに国際誌に掲載された。 (2)土着天敵増殖・維持保存・輸送のための最適条件の検討と手法の開発 有力天敵であるミヤコカブリダニを使って、簡易な増殖・維持保存・輸送システムを開発した。温度・光条件に加えて湿度の管理を、湿潤空気と乾燥空気の出入管理をPCで制御する方法によって簡素化し、栽培現場(農家や試験場)でも容易に利用出来る環境を整えた。また、天敵の質を落とすことなく輸送できる簡易なシステムを開発した。このシステムに関しては学会発表および国際誌での公表とともに、民間企業との今後の共同開発が検討されている。 (3)西日本地域での有望天敵カブリダニの調査 前年度、前々年度に引き続き、分布調査結果が乏しい中国地方の日本海側地域でカブリダニ調査を実施した。自然生態系と農業生態系の境界域に自生するアカメガシワとクズ葉上から、総計217頭の成虫(内、197頭が雌成虫)を採集・同定した。種構成としては、ニセラーゴカブリダニやソウヤカブリダニ、シマモリカブリダニ、ウルマカブリダニ、ケブトカブリダニなどが多個体を占めた。これらの天敵利用について検討をした。
|