研究課題/領域番号 |
21580066
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢野 修一 京都大学, 農学研究科, 助教 (30273494)
|
研究分担者 |
秋野 順治 京都工芸繊維大学, 応用生物科学部, 准教授 (40414875)
|
キーワード | ナミハダニ / ミカンハダニ / ケナガカブリダニ / 立体網 / 胴背毛 / 摂食阻害 / 捕食回避 / フィトール |
研究概要 |
平成22年度には、ナミハダニの造る立体網がハダニ自身、およびハダニを捕食するためにハダニの網に侵入するケナガカブリダニを各種アリの捕食から防御する効果を操作実験によって検証した。また、アリがカブリダニによるハダニのトップダウン制御に及ぼす影響を検証するために、ハダニの餌植物上でアリが採餌できる人工生態系の確立を目指してきたが、植物株をそのまま用いる方法よりも、餌植物葉を濡れた脱脂綿上に固定したリーフディスクを用いる方法が有効であることを予備実験によって確認した。また、ナミハダニの体内や糞、ハダニの餌植物には脂溶性成分のフィトールが共通して含まれ、これがハダニ当量でアリの摂食阻害を引き起こすことを生物検定によって解明した。フィトールは植物が普遍的に持つ葉緑素の分解物であり、多くの植物種を利用するナミハダニは、餌植物成分の代謝産物を利用してアリによる捕食を回避していると考えられた。この成果を第55回日本応用動物昆虫学会大会にて発表した。本研究の本来の目的は、立体網によるハダニの捕食回避メカニズムを解明することだが、立体網を張らないタイプのハダニ(ミカンハダニ)が、ナミハダニとは全く異なる捕食回避メカニズムを持つことを研究遂行過程で偶然に発見した。すなわち、ミカンハダニは葉面で日常的に葡匐姿勢をとり、この姿勢で葉面以外の全方位に屹立する長大な胴背毛が、カブリダニ等による攻撃を有効に防ぐことを操作実験によって証明した。この成果を上記学会および個体群生態学会第26回年次大会にて発表した。研究実施計画にない予期せぬ発見も、基礎研究の大きな意義である。
|