研究課題/領域番号 |
21580066
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢野 修一 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (30273494)
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研究分担者 |
秋野 順治 京都工芸繊維大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40414875)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | コウズケカブリダニ / ケナガカブリダニ / アリ / ハダニ / 防御網 / 移動 / 人工生態系 / 生物的防除 |
研究概要 |
平成24年度には、反復のある人工生態系内でハダニとカブリダニが餌パッチ間を移動できるシステムを構築してその個体数を追跡し、以下を発見した。ハダニの防御網を攻略できないアリ類やコウズケカブリダニなどのジェネラリストの捕食者は、ハダニ個体群の制御に有効ではないと考えられてきたが、防御網のない餌パッチ間を移動中のハダニが捕食される直接的効果と、捕食者を感知したハダニが餌パッチ外への分散を躊躇することによって負の密度効果を被ることと系内の加害パッチ数が抑制される間接的効果によって、ハダニ個体群の制御に貢献することが示唆された。逆に、ハダニの防御網を攻略できるスペシャリストのケナガカブリダニは、従来はハダニ個体群の制御に有効と考えられてきたが、ケナガはハダニの防御網に侵入するものの、分散ステージのハダニ成虫よりもハダニの卵を好んで捕食するために、結果的にハダニ成虫を取り逃がして分散させ、系内のハダニの加害パッチ数を増やすことが示された。この結果は、スペシャリストのカブリダニを利用するハダニの生物的防除法の常識に一石を投じるものである。以上の成果をいくつかの学会で口頭発表し(研究発表を参照)、農業現場の研究者に大きな反響を呼んだ。 一方、平成24年度には、アリによるハダニの捕食をカブリダニが助けることを人工生態系内で検証したこれまでの研究成果を国際誌に投稿し、さらに本研究遂行過程で発見したミカンハダニの対捕食者戦略に関する成果も国際誌に投稿したが、どちらもいまだ審査継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度には、アリがカブリダニによるハダニの制御を助けることを人工生態系内で検証した成果と、本研究遂行過程で発見したミカンハダニの対捕食者戦略に関する成果を国際誌に投稿した。審査に時間がかかり、年度中に受理されなかったが、この2報が平成25年度中に受理される可能性は高い。さらに、最終年度(H25年度)に向けて準備中の他2報(今後の研究の推進方策を参照)を投稿できるのはほぼ確実なので、達成度を②おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には、反復のある人工生態系内でハダニとカブリダニが餌パッチ間を移動できるシステムを構築してその個体数を追跡し、捕食者のカブリダニとアリがハダニの移動分散に与える致死的および非致死的効果を明らかにし、その成果をいくつかの学会で口頭発表したので、平成25年度には、必要なデータを補足した上で、この成果を国際誌に投稿する。さらに、ナミハダニの体内や糞、ハダニの餌植物に共通する脂溶性成分のフィトールが、アリによる摂食阻害に果たす役割を解明したこれまでの一連の成果も、本年度内に国際誌に投稿する。また、投稿中の論文2報(研究実績の概要を参照)の早期受理を目指す。
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