研究概要 |
本研究は昆虫の休眠・非休眠機構解明の一環であり,本年度は昆虫(カイコガ)の胚子発生に関与している一酸化窒素合成酵素(NOS)の新規スプライシングバリアント(NovNOS-V)の役割の解明を目的として研究を遂行した。具体的には,NOSとNovNOS-V遺伝子の構造と発現の解析,胚子発生時のNOSの活性測定を行った。その実績の概要を以下の(1)~(3)に示す。 (1)NovNOS-VとNOSのプローブを用いたゲノムサザンプロット解析により,NovNOS-VとNOSをコードする遺伝子(ゲノムDNA)は共通で,しかもゲノム(この場合,全染色体を意味する)中でシングルコピーであることが明らかとなった。そこで,NOSとNovNOS-VのcDNAの塩基配列を基にしてカイコのゲノムデータベース使って解析を行った。その結果,NOS遺伝子は21のエキソンと20のイントロンに分かれていた。この知見はカイコでは初となった。このようにエキソンが多くのイントロンにより分断されていることは,ショウジョウバエやヒトのNOS遺伝子の構造とも共通性がみられるので,このような構造はNOS遺伝子に特有なものであることが考えられた。また,NovNOS-Vは,その中の1つのエキソンが選択的スプライシングにより除かれて合成されることが判明した。 (2)NovNOS-VとNOS遺伝子発現解析をRT-PCRにより行った結果,NovNOS-V遺伝子は休眠卵を人為的に発生を進める処理(浸酸)を施した直後に特異的に発現されることが明らかとなった。 (3)NOSの酵素活性を浸酸処理休眠卵から抽出した粗酵素標品を用いて測定したところ,浸酸処理後に酵素活性が高くなる事が確認できた。
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