研究概要 |
本研究は昆虫の休眠・非休眠機構解明の一環であり,本年度は昆虫(カイコガ)の胚子発生に関与している一酸化窒素合成酵素(NOS)の新規スプライシングバリアント(NovNOS-V)の役割の解明を目的として研究を遂行した。具体的には,NOSとNovNOS-V遺伝子の構造と発現の解析,胚子発生時のNOSの活性測定を行った。その実績の概要を以下の(1)~(3)に示す。 (1)NOS遺伝子は,当初21のエキソンと20のイントロンより構成されていると判断していた。しかし,今回の詳細な解析により19エキソンが2つに分かれていることが判明し,22のエキソンと21のイントロンに分かれている事が明らかとなった。また,NovNOS-Vは,その中の1つのエキソンが選択的スプライシングにより除かれていることが判明した。 (2)NOS遺伝子発現解析をRT-PCRにより行った結果,休眠卵では産卵後48時間の発現が高く,非休眠卵では24時間から発現が高くなり60時間までその発現が維持されていた。一方,NOSとNovNOS-V遺伝子は浸酸処理を施した直後に発現が高くなることが明らかとなり,NovNOS-V遺伝子の発現は浸酸処理卵直後でのみ確認された。 (3)NOSの酵素活性を測定したところ,休眠卵では48時間での酵素活性が高く,非休眠卵では産卵直後の活性が高くその後減少した。浸酸処理卵では,浸酸処理卵直後に活性が高くなる事が確認できた。この酵素活性を担っているNOSが,細胞質基質に可溶化した状態で存在するのか,細胞膜等と親和性を保った状態で存在するのかを検討したところ,卵抽出物の不溶性画分の方に高い活性が認められので,オルガネラななどと結合しいる可能性が示唆された。
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