研究概要 |
昆虫培養細胞由来無細胞タンパク質合成系では、翻訳を促進する配列として、46塩基からなるMalacosma neustria核多角体病ウイルス由来ポリヘドリン遺伝子の5'非翻訳領域が用いられているが、その詳細な機能は明らかとされていない。そこで、1年目である今年度は、どの部分の配列が翻訳促進能を有するかを明らかにすることを目的として、モデルタンパク質としてβ-ガラクトシダーゼを用い、その合成における翻訳促進配列の欠損変異による影響を調べた。翻訳促進配列の5'末端から塩基を欠損させていくとその5'末端から17,18番目に相当する塩基CGが末端に近づくにつれて合成量が低下し、末端がCGとなる配列(30塩基)のときに合成量が大幅に低下した。さらに削除していき末端から29,30番目に相当する塩基AGを削除した5'末端から31-46番目に相当するAとTのみの配列(AAAAATAAAATATAAA,16塩基)を翻訳促進配列とした場合、全長を用いたときと比べ92%の合成量であった。3'末端から塩基を欠損していくと翻訳促進配列が短くなるに従って、合成量が低下する傾向が見られた。また、コザック配列の影響を除くため、3'末端から4塩基を保存し、その上流を欠損させていった場合についても同じような傾向が認められた。これらの結果から、翻訳促進配列の5'末端にGあるいはCが位置している場合、β-ガラクトシダーゼ合成を抑制すると考えられた。5'末端から31-46番目に相当する配列は全長の32%の塩基数にも関わらずそれと同等の合成量を示し、また、この配列の塩基を3'側から削除していくに従って合成量が低下していくことから、このAとTのみの配列が翻訳の促進に大きく関与していると考えられた。以上より、今年度の目標である翻訳促進配列の解析をほぼ達成することができた。
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