研究課題
本年度は、昆虫無細胞タンパク質合成系においてこれまで実績がない金属タンパク質の発現解析を行うことにより、金属タンパク質の成熟化過程を考察するとともに、効率的な金属タンパク質発現系の構築を試みた。研究対象としては、銅イオンを活性中心に持つ金属酵素である放線菌Streptomyces sp.REN-21が生産する有機溶媒耐性チロシナーゼ(OSRT)を用いた。先のOSRTの遺伝子解析の結果より、OSRTのオペロンはOSRTとその活性化に関わるORF393をコードする2つの遺伝子から構成されていることを明らかにしている。本研究では、まず、pTD1ベクターを用いてOSRTの無細胞合成系を構築し、それを用いて、mRNA添加量や比率を変え影響を調べることで活性化機構を解析した。その結果、最大活性は、鋳型としてOSRTとORF393のmRNAを等モル量添加し共発現させた後、最終濃度25μMの酢酸銅を加え、25℃、1時間インキュベートすることで得られた。また、別々に合成したOSRTとORF393を混合し酢酸銅を添加することでも高い活性が検出された。これらのことは、合成後のOSRTがORF393と1:1で相互作用しさらに銅イオンの配位により活性化することを示唆している。また、ORF393の推定されるOSRTとの相互作用部位および銅イオン配位部位の変異体を作製し、それらのOSRT活性化に対する効果を検討した。さらに、銅イオンを活性中心に持つ金属酵素である放線菌Streptomyces lavendulae REN-7が生産する耐熱性ラッカーゼについても、効率的な発現系を構築した。以上の結果より、昆虫無細胞タンパク質合成系での金属タンパク質の発現系の構築およびそれを用いた解析を行うことができ、本年度の目標を達成した。
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Current Pharmaceutical Biotechnology
巻: 11 ページ: 279-284