本研究では、昆虫を用いた無細胞タンパク質合成系に的を絞り、その翻訳機構や生成タンパク質の状態を解析し、系を改良していくことで、これまで構築してきた技術をさらに高度化することを目的としている。平成23年度は、(1)先ず、平成21年度に進めた昆虫培細胞由来無細胞タンパク質合成系における46塩基からなる翻訳促進配列の機能解析を行うことにより見出されたコアとなる16塩基の配列をもとに、その繰り返し配列を作製しそれらの翻訳促進能を解析した。その結果、コア配列を順方向に2回繰り返した配列を用いることで従来の46塩基からなる翻訳促進配列と比べて1.4倍のタンパク質合成に成功した。今回得られた成果は、昆虫無細胞タンパク質合成系の高度化に直結する新しい技術であることから、特許出願を行った(特願2012-38002)。(2)また、独自に調製した動物培養細胞由来のミクロソーム膜を系に添加することによる膜タンパク質発現、解析手法を構築するための前段階として、モデル膜結合性タンパク質として選定した放線菌Streptomyces lavendulae REN-7が生産する耐熱性ラッカーゼの無細胞発現系を構築した。(3)さらに、発現したラッカーゼの活性化条件の検討を行い、DTTフリーとし、25μM硫酸銅を系に添加することで最も高い活性が得られることがわかった。これによって、膜タンパク質発現、解析手法を構築するための評価系を確立することできた。
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