研究課題
乾燥耐性昆虫であるネムリユスリカの幼虫では、乾燥に伴いLEAタンパク質(LEA1, LEA2, LEA3, LEA4)およびトレハローストランスポーター(TRET)1の発現が誘導される。これらの機能を確かめるために作製した遺伝子組換えキイロショウジョウバエ系統を用い、GAL4-UASシステムにより導入遺伝子を発現させた。恒常的に発現誘導するActin5プロモーター系統と交配を行ない、交配第一世代(F1)の成虫で導入遺伝子の発現を定量PCRにより検証したところ、調査した14系統で導入遺伝子の発現が確認できた。個々の遺伝子発現による生体への影響を調査するために、遺伝子発現の有無による性比や出現数の差異を成虫で調査したところ、LEA1-LEA4導入系統では顕著な差は認められなかったが、TRET1導入系統ではその発現が誘導された個体の数がやや減少する傾向が認められた。また、F1における系統内の交配を行なったところ、TRET1発現誘導個体は雄雌ともに不妊であった。そこで生殖腺を観察したところ、卵巣および精巣は確認できたものの、卵巣では卵が小さく未成熟であることが分かった。これらからActin5プロモーターGAL4によるTRET1の恒常的発現は成長や生殖に影響を与えることが分かり、乾燥耐性能力の付与に当たって、厳密な発現調節が必要であることが分かった。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Insect Biochem Mol Biol Vol. 40
ページ: 30-37
Biochemistry Vol. 49(6)
ページ: 1093-1104