乾燥耐性昆虫であるネムリユスリカの幼虫では乾燥に伴い多量のトレハロースが全身に蓄積され、その輸送にトレハロース輸送タンパク質(TRET1)が関わっていると考えられている。トレハロースの蓄積と乾燥耐性能力の関係についてキイロショウジョウバエを用いて検証するために、まず幼虫および成虫からトレハロースの検出を試みた。その結果、幼虫からはトレハロースが検出されたが成虫では検出限界以下であることが判明した。次いでトレハロースの取り込みを確認するため、全身でTRET1発現を誘導し20時間絶食させた成虫に1Mトレハロースを1時間食餌させたところ、消化管以外の組織での糖の存在は確認されたが、その量は微量でトレハロースであるかどうかは不明瞭であった。より高濃度のトレハロースを与える等、手法を検討する。また、ネムリユスリカの幼虫では乾燥に伴いLEAタンパク質(LEA1-4)が発現するが、各々のLEAタンパク質のアミノ酸配列解析から細胞内局在が異なると推測されていることや、トレハロースとの関係が指摘されていることから、乾燥耐性能力の向上にはこれらすべての乾燥耐性関連遺伝子を同時に発現させる必要が考えられる。そこで、それぞれの遺伝子を単独に持つキイロショウジョウバエ系統間の交配を行ない、染色体の組換えを利用して第2および第3染色体上に2つの乾燥耐性関連遺伝子を持つ遺伝子組換え体を27系統作製し、さらに交配を行なうことで同一染色体上に3つの外来遺伝子を持つ系統を4系統作製した。これらの変異体シリーズの交配の組み合せにより、ゲノム上にすべてのLEAタンパク質遺伝子とTret1を持つ系統を作製した。
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