研究概要 |
スズメバチの幼虫が作るマユ(ホーネットシルク、以下ではHSと略す)が、『Coiled-coil構造を主体とした、羊毛などのケラチンに近い構造を有し、βシートから成る従来のシルクとは全く異なった構造である』ことを実験的に証明することを目的とする。さらに、このCoiled coilの形成が、HS水溶液のゲル化を促進することの実証と、このゲル形成能力を利用したCoiled coil構造から成る高伸縮性タンパク質素材を得るための基礎的知見を得ることを目的としている。 この目的の達成に向けて,平成23年度は以下に示す2課題について研究を行った. (1)HSの安定同位体元素の導入に関する検討を行う (2)Coild-coil構造を維持したホーネットシルクで高伸縮性タンパク質素材を得る 昨年までに、^<13>C同位体元素を含むシルク蛋白質を幼虫体内で生合成させることに成功した。しかし、吐糸する前に死亡してしまい、繭として得ることはできなかった。今年度は、まず、幼虫に与える餌の検討から行い、^<13>C同位体標識された繭を得ることを可能にした。Alaを^<13>13C同位体標識した繭を使って固体NMR解析を行うことにより、ホーネットシルク中に存在するαヘリックス構造の割合を定量評価することに成功した。この結果と、バイオインフォマティックス計算からの結果を組み合わせることにより、ホーネットシルクの詳細な分子構造を解明することができた。 さらに、ホーネットシルクのハイドロゲルから円筒状に乾燥・収縮させてチューブを作製する技術を開発した。このチューブは、天然状態のホーネットシルクと同様のCoiled-coil構造を有し、さらに、高い伸縮性を示した。
|