研究概要 |
本研究では、Na型塩類耐性イネ科植物シオチガヤの特性を調査した。最初に、八郎潟下層土とバーミキュライトから人工Na型アルカリ土壌を作成した。次に、作成した人工Na型アルカリ土壌へ重炭酸ナトリウムバッファーを添加して、土壌条件をpH9.9、電気伝導度(EC)を1.0,1.5、2.0、2.5のように段階的に調節し、現地のアルカリスポットの土壌に近いストレス状態でのシオチガヤの生育特性を、オオムギ、エンバクと比較することで評価した。 その結果、Na型アルカリ土壌条件下でECが上昇した時、オオムギやエンバクは根が伸長せず、生育が強く抑制されたにも関わらず、シオチガヤの生育はあまり抑制されなかった。シオチガヤの地上部のNa含量は、オオムギやエンバクに比較してかなり低く抑えられていた。また、土壌中のNa型アルカリ塩ストレスが増加しても、シオチガヤ地上部のK、Mg、Ca含量はほとんど減少せず、低いレベルで一定だった。それに伴って、Na/K比も非常に低い値を示していた。それに対し、オオムギやエンバクでは、土壌のEC1.0において、地上部のNa含量がシオチガヤの4倍ほどに増加し、K、Ca Mg含量は大きく抑制された。シオチガヤのNa吸収抑制能力と他の多量必須元素の高い吸収能力が明確に示された。 しかし、今回の実験では土壌分析が行なわれておらず、地上部P含量、Fe含量などについても測定が行なわれていない。そのため今回測定されなかった項目に、シオチガヤのNa型アルカリストレス耐性機構に関わる重要な項目が存在するかもしれない。また、今回は人工的にNa型アルカリ土壌を再現して実験に用いたが、実際の現地における植生が減退している斑状の領域(アルカリスポット)の土壌とは含有元素量・物理性など、様々な部分で異なっている。そのため、今後は中国東北部の現地の土壌を用いて追試を行なうことが望ましい。
|