研究概要 |
シオチガヤは、中国東北部のNa型アルカリ塩類集積土壌で生育するイネ科塩類耐性植物である。本研究では、シオチガヤの耐性機構の検討を目的として、人工Na型アルカリ塩類集積土壌でシオチガヤの栽培実験を行い、Na,K,Ca,Mg,P含量を他のイネ科植物と比較した。 秋田県八郎潟下層土をNaHCO_3:Na_2CO_3 1:1混合液に浸漬し土壌にNaを吸着させ、土壌pHを上昇させ、人工土壌を作成し植物栽培を行った。上記の手順で作成した、人工土壌とバーミキュライトを体積比1:8で混合したもの、および対照区として無処理の八郎潟下層土に1:8の体積比でバーミキュライトを混合したものを使用した。実験ではシオチガヤ、トールフェスク、チモシー、ペレニアルライグラス、ベントグラスを200mlのポットにてガラス温室内で栽培した。播種後50日で地上部を採取し、硝酸分解後、フレーム式原子吸光光度計及びバナドモリブデン酸アンモニウム法でNa,K,Ca,Mg,P含量を測定した。 シオチガヤは高pH条件下でも乾物重の減少量が少なく、生育が阻害されにくかった。高pH条件下で、シオチガヤはK、Na及びP含量には他のイネ科作物と大きな違いは見られなかったが、CaとMg含量は他の植物種とは異なり増加した。これらのことから、シオチガヤの耐性機構の特徴は、高pH条件下でも一定水準以上の必須元素濃度を地上部で維持でき、生育が阻害され難いこと。また、特にCaやMgなどの2価カチオンの吸収能が高いことが示唆された。 また、上記の実験とは別に、水耕栽培にて根圏のHCO_3^-イオンを増加させ、塩地茅とオオムギのムギネ酸分泌量を比較する実験を行った。その結果、80mMのNaHCO_3が存在すると、オオムギではムギネ酸分泌量が激減するのに対し、シオチガヤでは減少しなかったことから、この植物のムギネ酸分泌系がHCO_3^-耐性を持つと考えられた。
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