研究概要 |
今年度、本研究では、中国吉林省大安市郊外のソーダ質土壌の水洗浄の影響を検証した。この土壌は水洗浄により土壌ECが減少し土壌の交換性陽イオン交換能(CEC)も減少した。土壌pH、交換性Na量は著しく減少したが、交換性K,Ca,Mg量が変化しなかった。水の洗浄はソーダ質土壌から主にNa^+の除去により土壌ECを減少させることが明白であった。また、この土壌からのムギネ酸などの金属キレーターによる金属元素の溶出実験では、同じアルカリ土壌である石灰質土壌や、酸性土壌である黒ボク土とは異なり、FeやAlが多量に溶出した。どのキレート剤を添加してもFe溶出量の有意な変化はなかった。この結果はCu、Mn、Znには見られなかったが、Al溶出には同様の傾向が見られた。 シオチガヤとオヒゲシバは、土壌pHが10に達する中国東北部のアルカリ土壌地帯に自生する高pHや高浸透圧だけでなく乾燥、凍結などの環境ストレスに対して、高い耐性を有しているイネ科植物である。シオチガヤ根部から細胞膜を単離し、養分吸収機構及び塩耐性機構に重要な役割を持つPMH^+-ATPaseの特徴付けを行い、オオムギとオヒゲシバとの比較を行った。水耕培地中のNaCl、NaHCO_3が植物の根部PMH^+-ATPaseに与える影響を調べた。PMH^+-ATPase活性の増減や生育の様子から、NaClに対する耐性はシオチガヤ≧オヒゲシバ>オオムギの順であり、NaHCO_3に対する耐性は、シオチガヤ≫オヒゲシバ>オオムギの順であること示唆された。シオチガヤでは、濃度が増加するに従い、H^+-ATPase活性が増加したことから、シオチガヤの強いNaHCO_3耐性に根部のPMH^+-ATPase活性の増加が関与していると示唆された。 今後もソーダ質土壌、及び、そこでの植物生育の特性を明らかにし、植生回復を促進する研究を進めていく必要がある。
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