研究概要 |
トマトにおいて開花後の乾燥・塩類ストレスにより果実糖度が増加することが以前から知られている。本課題では果実発達初期のデンプン生合成に着目して、ADP-Glucose pyrophoshorylase (AGPase)の発現制御メカニズムや栽培環境ストレス、糖代謝シグナルクロストークの実態解明を進めている。 1.果実におけるAGPase発現制御様式の解明 開花後10~14日目のトマト果実に拳けるAgpS1,L1遺伝子の発現応答性、糖濃度依存性、相乗効果の有無について解析した。その結果、L1遺伝子は糖自体により発現制御を受けること、また、これらの過程にはヘキソカイネースを介した糖シグナリングが関与すること、S1遺伝子はL1とは異なる様式の発現制御を受けること等を明らかにした。(H.22へ継続) 2.AgpL1およびAgpS1遺伝子の転写因子単離と機能解析 ゲノムデータベース情報を基にAgpL1およびAgpS1のプロモーター領域を各々3kbp前後単離し、塩基配列を明らかにした。また、各々の遺伝子について、GUSレポーター遺伝子を連結した発現ベクターを作製し、形質転換体の作出を開始した(H.22へ継続)。 3.AGPase遺伝子RNAi形質転換体の作出と機能解析 AgpL1,AgpS1遺伝子について、CaM35Sプロモーターおよびトマト果実特異的Ppc2プロモーターを連結したRNAi形質転換系統を作出し、2倍体、1コピーで標的遺伝子がノックダウンされている系統を2系統選抜した(H.22へ継続)。 4.NCED遺伝子過剰発現形質転換体におけるデンプン生合成・糖代謝動態の解析(研究分担者が担当) 既に作出済みのCaM35Sプロモーターを連結したモモPpNCED1およびPpNCED2過剩発現形質転換T1系統について導入遺伝子のコピー数を確認した結果、PpNCED1については導入個体が認められなかった。PpNCED2については1コピー、および数コピーが導入された系統が確認され、定量的RT-PCR解析により標的遺伝子の発現量を増加していることが確認された(H.22へ継続)。
|