作物の窒素利用効率の向上を図るためには、根における高親和性硝酸輸送系(HATS)を介した低濃度硝酸イオンの獲得機構を明らかにする必要がある。植物におけるHATSは、NRT2とNAR2の2つのタンパク質で構成されいる。本研究では、オオムギにおけるHvNRT2とHvNAR2の組織分布、両タンパク質の相互作用を明らかにすることを目的とした。 オオムギ幼植物に、0.4mM硝酸イオンあるいは0.4mMアンモニウム供与後、12時間後に根をサンプリングした。根端から2mmあるいは20mmの位置で作成した横断切片に対し、一次抗体としてHvNRT2抗体およびHvNAR2抗体を、つづいて蛍光標識2次抗体を反応させ、蛍光顕微鏡で観察した。その結果、HvNRT2とHvNAR2は、伸長域では表皮細胞に、根毛域においては、皮層の最も外側の1層の細胞層にのみ共局在することが明らかになった。これにより、HvNRT2とHvNAR2がHATSの機能分子となり得ることが空間的配置上からも支持された。また、低濃度域での硝酸イオン吸収が根の表皮細胞か皮層組織のごく一部の細胞で行われることが示唆された。さらには、HvNRT2およびHvNAR2は、存在する細胞内では遠心側の細胞膜に極性を持って局在していることが明らかになった。これらの結果は、硝酸イオンが表皮と皮層組織全体で吸収されるとするこれまでの考えを覆すものであり、大きな意義ある
|