植物根による低濃度硝酸イオン吸収においては、高親和性硝酸輸送系(HATS)の働きが重要である。オオムギではHATSを直接担うタンパク質として、高親和性硝酸トランスポーター(NRT2)のみが考えられてきたが、新たにNRT2の制御因子と考えられるNAR2タンパク質が発見された。すなわちHATSは、NRT2とNAR2が担う2成分輸送系と考えられた。今年度は、HATSの機能発現におけるNAR2の役割を明確にすることが重要であると考え、NRT2とNAR2の植物細胞内における相互作用と、HATSの機能発現におけるNAR2の役割を明らかにすることを目的として研究を行った。 植物細胞内におけるHvNRT2とHvNAR2の相互作用を解析するために、Bimolecular fluorescence complementation (BiFC)法による解析を行った。すなわち、HvNRT2のN末端とN末端側Yellow Fluorescence Protein (YFP)との融合タンパク質(nYFP:HvNRT2)、およびHvNAR2のC末端とC末端側YFPとの融合タンパク質(HvNAR2:cYFP)をタマネギ表皮細胞に同時に発現させたところ、再構成されたYFPによる蛍光が細胞膜で観察された。その結果、HvNRT2とHvNAR2が植物細胞内の細胞膜上で相互作用して存在することが明らかになった。 続いて、HvNRT2あるいはHvNAR2をそれぞれGreen Fluorescence Protein (GFP)との融合タンパク質としてタマネギ表皮細胞に個別に発現させ、GFP蛍光を観察した。その結果、いずれの融合タンパク質も単独では細胞膜で正常にターゲティングされないことが明らかとなった。 以上のことより、HATSの細胞膜上での機能発現において、HvNRT2とHvNAR2の相互作用が重要であることが示唆された。
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