研究課題/領域番号 |
21580078
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山本 洋子 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (50166831)
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研究分担者 |
佐々木 孝行 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (60362985)
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キーワード | アルミニウム耐性 / 液胞 / エネルギー代謝 / 呼吸 / タバコ培養細胞 / 乳酸発酵 / プログラム細胞死 / vacuolar processing enzyme |
研究概要 |
本研究は、アルミニウム(A1)のエネルギー代謝(糖代謝)への影響を解明することによって、A1耐性に関わる遺伝子の同定を最終目標としている。本年度は、タバコ培養細胞系を用い、スクロース輸送体遺伝子(NtSUT)のA1耐性への関わりと、A1耐性タバコ培養細胞株と野生株を用いたエネルギー代謝ならびに細胞死誘発機構の比較解析を行った。 昨年度、タバコ培養細胞を用い、NtSUT遺伝子の高発現株(OX)と発現抑制株(RNAi株)を作成したので、本年度はこれらの形質転換体と野生株を用いて解析した。野生株ではコントロール処理(A1無添加)中に、細胞内遊離糖含量の増加が見られ、それが水吸収の駆動力となっている。この現象がOX株では促進されRNAi株で抑制されていたことから、NtSUTがコントロール処理においてスクロース吸収に関与し、間接的に細胞伸長に関与していることが示唆された。しかし、コントロール処理培地へA1を添加すると、すべての株において、細胞内遊離糖の増加が強く抑制された。従って、NtSUTを高発現させてもA1によるスクロース取り込み阻害は改善されず、NtSUTのA1耐性への貢献度は低いと判断した。 A1耐性細胞株と野生株を用いて乳酸発酵と呼吸について比較したところ、A1耐性細胞株では乳酸発酵が高まり呼吸が低下していた。次に、A1による細胞死の誘発機構を比較した結果、誘発機構には2種類あり、野生株で見られるミトコンドリアの機能阻害と活性酸素の誘発を伴うものと、A1耐性細胞株で見られるVacuolar Processing Enzyme(VPE)が関与し液胞崩壊を伴うものであることが示唆された。 以上、A1耐性に関わる代謝系として乳酸発酵、A1耐性に関わる細胞死誘発機構として液胞崩壊とVPEがそれぞれ新規なものとして見出され、これらの制御によるA1耐性獲得の可能性が示唆された。
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