研究概要 |
細胞内共生である根粒組織形成については、変異体を利用したマップベースクローニングにより共通シグナル伝達経路に関与する遺伝子が次々に明らかになってきた。しかし共通シグナル伝達経路の後の細胞内共生や窒素固定の発現のための因子についてはFix-変異株をもちいた解析が行われているものの、知見は極めて少ない。特に宿主マメ科植物と根粒菌が共に分化して複雑な代謝機能を発現して形成する細胞間代謝ネットワークの実体解明までには至っていない。 本研究課題では、ダイズ、ミヤコグサ根粒バクテロイドおよび根粒細胞(特にミトコンドリアなどの根粒内オルガネラ)のプロテオミクス解析を行った。その結果、ダイズ根粒菌に関しては、278個のタンパク質について感染初期から老化時までの発現パターンを調べることができた。ミヤコグサ根粒菌に関しては、Free living根粒菌とバクテロイドタンパク質359個のタンパク質を同定した。ミヤコグサ根粒ミトコンドリアに関しては198個、ダイズ根粒ミトコンドリアに関しては272個同定を行った。この成果により根粒細胞及びバクテロイドで代謝系成立、維持、崩壊時に特異的に発現増幅する遺伝子群を統括的にまとめた。さらに共生窒素固定活性に発現量が増減する遺伝子群、特に代謝遺伝子群について変異株を作成後共生窒素固定能を測定した。その結果ダイズ根粒菌変異株を用いた結果から共生に必要な金属シャペロンを見いだし、ミヤコグサ根粒菌STM変異株を用いた結果から分岐アミノ酸は植物側からバクテロイドへ提供され、Ser,Glyのアミノ酸はバクテロイド内の発現によってのみ依存しており、植物側から提供されることはないこと、NAD-マリックエンザイムは共生時に必要であり、老化時には重要ではないことを明らかにした。
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