研究概要 |
ダイズ根粒菌バクテロイド分化により発現量が増加するタンパク質を選択し、変異体或いは二重変異体を作製した。その結果。Hypothetical proteinであるbll4880タンパク質が欠損した菌株をダイズに感染させた場合に窒素欠乏の症状が現れた。このタンパク質はシトクロームCへの銅を輸送するシャペロンタンパク質に存在する領域(HX_<10>MX_<22>HXM)を保存しており、STRINGデータによりbll4880と相互に発現するタンパク質を調べた結果、ScoIホモログタンパク質であるblr1131が見いだされた。これを証明するためにbll4880,blr1131二重変異株を作成しダイズに感染させるとBll4880単一変異株よりさらに顕著な窒素欠乏を示した。また、二重変異株のシトクロームC活性はバクテロイド状態での活性が野生株の活性の10%以下に低下することから、bll4880たんぱく質はバクテロイド誘導型シトクロームCに特異的に銅を輸送するための金属シャペロンであると考えられる。ダイズ根粒菌ゲノムにはbll4880ホモログな遺伝子は少なくとももう一つ存在するが(blr7088)この遺伝子のバクテロイドでの発現はbll4880遺伝子より低い。バクテロイド誘導型シトクロームcオキシダーゼ遺伝子はFixNMOP以外に新規なheme-copperシトクロームcが存在する。しかし新規なシトクロームcオキシダーゼ遺伝子はFixNOPQ遺伝子ほどバクテロイドでの発現は強くない。また、Cox11ホモログの遺伝子blr1174遺伝子はバクテロイドでの発現が低下する。以上の結果、バクテロイド条件下では、bll4480銅金属シャペロンが誘導した後、blr1131を介してシトクロームcオキシダーゼへ銅を受け渡していると結論づけた。
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