研究課題
真核生物の細胞増殖や分化において必須の機能を果たすHsp90の祖先タンパク質はHtpGであるが、大腸菌や枯草菌等の従属栄養真正細菌におけるHtpGの機能は不明である。これに対して我々は、独立栄養真正細菌であるシアノバクテリアのHtpGが環境応答において重票な働きをすることを見出したが、その分子機構は解明されていない。本研究では、HtpGが、DnaJ2(Hsp40)などのコシャペロンを介して、基質タンパク質と特異的に相互作用し、それらの機能や安定性を調節することで環境応答における重要な働きをするという作業仮説をたて、それを検証することを目的とした。HtpGは変性タンパク質の凝集阻止(基質結合)活性をもつが、DnaK(Hsp70)のように折りたたみ(folding)活性をもたないために、HtpGに結合した基質の機能がどのように回復・調節されるのかについては不明であった。我々は、HtpGがDnaJ2やDnaK2と相互作用することを発見した(平成21年度)が、HtpGがDnaJ2を介してDnaK2と協同でシャペロン作用するのではないかと考えた。この仮説を実証するために、本年度はまず、シアノバクテリアのDnaK2/DnaJ2/GrpEシャペロン系を確立した。さらに、表面プラズモン共鳴バイオセンサー(BIACORE)を用いて複合体の解離定数等を求めることにより、HtpGとDnaJ2の親和性の方が、HtpGとDnaK2のそれよりも大きいことを明らかにした。加えて、HtpGが変性基質タンパク質と安定な複合体を形成し、基質の凝集を抑制するのに対して、(予期に反して)DnaJ2の変性基質凝集抑制活性が低いことも明らかにした。これらの結果から、基質タンパク質は、まずHtpGと相互作用し、(DnaK2とも相互作用しうる)DnaJ2を介して、DnaK2に移動し、折りたたまれて活性化するものと考えた。この作業仮説に基づき、シアノバクテリアのDnaK2/DnaJ2/GrpEシャペロン系とHtpGの共同作業を解析した。その結果、HtpGに結合した基質タンパク質がDnaK2/DnaJ2/GrpEシャペロン系によって折りたたまれて再活性化することが明らかになった。この新規なシャペロン系を、Hsp90/Hsp70シャペロン系と呼ぶことにした。
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Biochemical Journal
巻: 435 ページ: 237-246
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 74 ページ: 2273-2280