細胞分裂は生命の本質に関わる現象であり、その分子機構解明は生物学の重要な課題であるだけでなく、特に動物細胞においては制ガン剤の開発など応用面においても重要である。一方、動物細胞の基質接着は、組織の発生・分化・形態形成や細胞遊走に決定的な役割を果たすため創薬のターゲットとなっているが、近年、その細胞分裂への関与が報告されるようになり、細胞遊走、細胞分裂との関係も含めた分子機構解明が急務である。本研究は、真核微生物である細胞性粘菌の単細胞アメーバを動物型細胞のモデルとして申請者がこれまで行ってきた動物型細胞質分裂の分子機構解析を基質接着との関連にも考慮して推進することを目的としている。具体的に最終の平成23年度では、既に組換えタンパク質として精製し、アクチンの高次構造形成に関わることを証明したD411-2pがアクチンの束化活性を持つこと、活性には細胞内でアクチンが集積する部位でアクチンと共局在する部分断片で十分であることを明らかにした。D411-2p相同タンパク質CDIBについては、相同部位CD1を含む断片がその機能に必要であることを明らかにし、相互作用する分子の探索を行った。その結果、酵母ツーハイブリッド法で弱く相互作用する分子を数種見いだしたが、相互作用を証明するには至らなかった。ORFが長く解析が遅れていたD47-1p、CykBについては、cDNAの再調製からやり直し、発現プラスミドがほぼ完成したので、わずかな実験で遺伝的相補を証明できる見通しである。低分子量Gタンパク質については、新規細胞質分裂関連タンパク質を発見した。インテグリンベータ様タンパク質群については、その1種は点変異を持つcDNAしか取得できなかったが、ほとんどが細胞質膜に局在すること、未同定の細胞内小胞の膜に局在している2種の局在が少なくともマクロピノソームと収縮胞ではないことがわかった。
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