細胞分化に伴うダイナミックなDNA再編成は、微生物から高等生物に至る多くの生物に見出されている。本研究は、ファージゲノムを起源とした枯草菌のskin(sigK intervening element)の解析を基盤とし、他の細菌の細胞分化に伴うDNA再編成を検出し、細胞分化におけるファージDNAが介在するDNA再編成を広く普遍的な現象として位置づけることを目的としている。今年度は、1.skin elementの致死因子をコードする遺伝子を解析し、このエレメント内のyqaMが細胞の複製開始阻害に関わることを示した。また、skin elementのレプレッサーの誘導ドメイン解析のため、枯草菌のdefectiveファージPBSXのレプレーサーとのキメラタンパク質を作製した。2.一方、ゲノムの塩基配列が決定されている有胞子細菌中でのファージDNAにより分断されていると推定される遺伝子の抽出をおこなった。この結果、約50個の遺伝子を見出すことができた。このうちフランスの土壌から分離され、安全性の確認されているBacillus weihenstephanensis KBAB4のspoVFB遺伝子類似遺伝子(以下、spoVFBとする、枯草菌ではジピコリン酸合成に関わる酵素をコードすることが示されている)に着目した。この株のspoVFBにはファージDNAが介在しており、この遺伝子が胞子形成期DNA再編成により完全型のspoVFに再構築される可能性が示唆された。今後はB.weihenstephanensis KBAB4のDNA再編成メカニズムの解明を目指す。
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