細菌バイオフィルムの形成を制御するGGDEF/EAL蛋白質は新規セカンドメッセンジャー「bis-(3'-5')-cyclic dimeric GMP(c-di-GMP)」の代謝酵素であるが、申請者らは大腸菌のGGDEF/EAL蛋白質「CsrD」がc-di-GMPの代謝活性を示さず、small RNAの安定性制御を介してバイオフィルムを制御していることを明らかにした。本研究の目的はc-di-GMP非代謝型GGDEF/EAL蛋白質「CsrD」の機能と、複数のc-di-GMP代謝型GGDEF/EAL蛋白質間の相互作用及び新たな機能を解明することである。 CsrDによるsmall RNA安定性制御メカニズムを明らかにするため、エキソヌクレアーゼであるPNPaseの変異株において蓄積するCsrB RNA分解中間産物の3'-末端を3'-RACE法によって確定し、分解過程を予測した。これらの部位はCsrB RNAの分解に必須なエンドヌクレアーゼの切断部位である可能性が考えられた。そこで、切断部位と予想される領域を除いた変異CsrB RNAを大腸菌内で発現させ、野生型CsrB RNAと比較した。その結果、5'-末端の構造及び3'-末端のターミネーター上流一本鎖領域がCsrB RNAの機能に大きな影響を与え、この領域の安定性への関与が示唆された。また、部位特異的変異によってアミノ酸残基を置換した変異CsrDの活性を解析したところ、HAMP-likeドメインとGGDEFドメインN末端領域がCsrB RNAの安定性制御に影響を及ぼすことが明らかとなった。また、オペロンを形成するなど相互関係が予想されるc-di-GMP代謝型GGDEF/EAL蛋白質や、機能不明GGDEF/EAL蛋白質の遺伝子を複数クローン化し、これらがバイオフィルム形成に影響を与えることを確認した。
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