コリネバクテリウム・グルタミクムのゲノムから遺伝学的なアプローチで微好気生育能に関わる遺伝子を6種特定した。これらは、機能未知の膜タンパク質遺伝子2種(Cgl2857 & Cgl2859)、シグマ因子SigD遺伝子(Cgl0600)、核酸の合成に関わるシチジル酸キナーゼ遺伝子(Cgl1427)、鉄の取り込みに関わるシデロフォア関連タンパク質遺伝子(Cgl0807)、そして呼吸鎖に関わるフェレドキシン関連タンパク質遺伝子(Cgl1102)であった。各遺伝子の種々高濃度酸素要求株に対するクロス相補能を調べた結果、前4者は対応する変異株だけでなく他の変異株も相補する能力を有していた。これら6種の内、特に興味が持たれる膜タンパク質遺伝子(Cgl2857 & Cgl2859)に焦点をあてた機能解析を開始した。いずれの遺伝子もそのホモログが大腸菌や枯草菌など他の微生物には存在せず、いわゆるコリネ型グルタミン酸生産菌に特有であった。低酸素適応性との関連を探るため、野生株から各々の単独破壊株および両者破壊株を造成した。微好気生育能は、野生株≧ΔCgl2857株>ΔCgl2859株>ΔCgl2857 & ΔCgl2859株の順に低下したことから、微好気生育能に対し、主な役割はCgl2859が担い、Cgl2857は補助的と考えられた。それら膜タンパク質遺伝子が取得された高濃度酸素要求株OX-119について変異点を解析した結果、Cgl2857-Cgl2859クラスターの上流に変異が見出された。この変異を野生株に導入すると確かに微好気生育能が失われた。
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