研究課題/領域番号 |
21580089
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
池田 正人 信州大学, 農学部, 教授 (00377649)
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研究分担者 |
竹野 誠記 信州大学, 農学部, 助教 (30422702)
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キーワード | コリネバクテリウム・グルタミクム / 低酸素適応性 / シチジル酸キナーゼ / リボヌクレオチドレダクターゼ / GapN / Rho |
研究概要 |
これまでに、コリネ型アミノ酸生産菌の微好気生育に関わる遺伝子の1つとして、核酸合成に関わるシチジル酸キナーゼ遺伝子cmkを特定している。さらに、微好気生育能が低下した種々の変異株で同遺伝子を増幅すると、微好気生育能が改善されることもわかっている。今年度は同反応がどのように微好気生育に関わるのかを解析した。cmkの破壊株では確かに微好気生育能が著しく低下し、cmkを含むプラスミドの導入で回復した。興味深いことに、cmk破壊株の微好気生育能は、シチジル酸キナーゼ反応に続くリボヌクレオチドレダクターゼ(DNA合成の鍵酵素で活性発現に酸素を要求)の遺伝子群(nrdHIE&nrdF)をセットで含むプラスミドでもほぼ完全に回復した。一方、好気的条件の撹拌培養ではcmk破壊株はシード培養時の酸素不足に起因してラグ期が延びる現象を認めたが、このラグ期長期化も同プラスミドの導入により有意に改善された。以上から、cmkの破壊に伴う微好気生育能の低下とラグ期長期化の主要因が共にリボヌクレオチドレダクターゼの反応律速にあること、ひいてはcmkが低酸素環境での正常なDNA合成に重要な役割を担っていることが明らかになった。 一方、酸素の必要量そのものを減らすとの観点から、自前のNAD型GapA代えて、ミュータンス菌のNADP型GapNを発現するコリネ菌の育種を行ってきた。このGapN発現株はグルコースで良好に生育できなかったが、同株から生育が部分的に改善されたサプレッサー株が取得できることを見出した。代表株の全ゲノム解析を行い、サプレッサー変異が転写終結因子Rhoのミスセンス変異(R696C)であることを突き止めた。同変異をGapN株に導入すると確かに生育が改善されたが、野生株バックグラウンドでは生育への影響は見られず、代謝生理への影響は軽微と判断された。なお、この位置の変異は大腸菌でRhoの転写終結活性に必要なATP加水分解活性を低下させRhoの働きを弱めることが報告されている。従って、同変異を有するコリネ菌ではRho依存遺伝子のリードスルーが起こり、下流遺伝子の発現上昇が起こっている可能性がある。
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