ジスルフィド結合の形成は、産業上有用なタンパク質を含む、多くの分泌タンパク質が正しい立体構造を形成する上で必須のステップである。従って、その仕組みの理解は基礎と応用の両面かち重要である。その理解に向けて以下の解析を行った。 1.大腸菌ペリプラズムでは酵素DsbAが分泌タンパク質にジスルフィド結合を導入する。その反応過程で、DsbAと基質が分子間ジスルフィド結合で連結された中間体を形成する。生体内で進行するジスルフィド結合形成の仕組みを理解するためには、この中間体を検出し解析することが必要である。しかし、この中間体は検出が難しく、その解析は遅れていた。本研究において、研究代表者らは、大腸菌の分泌タンパク質のひとつ(PhoA)において、ジスルフィド結合形成反応中間体のひとつを生体内で検出するとともに、この中間体を経てジスルフィド結合を形成する過程を追跡することに世界で初めて成功した。中間体の解析から、ジスルフィド結合形成過程に関して様々な新知見を発見し論文として報告した。 2.Impは大腸菌の外膜に局在するβバレル型のタンパク質である。分子内には2組のジスルフィド結合が存在するが、その形成には上記のDsbAだけでなくペリプラズムの分子シャペロンである、SurAが必要であることが予備的な実験から明らかになっている。分子シャペロンを必要とするこのユニークな、Impにおけるジスルフィド結合形成の仕組みを理解するために、まず、Imp分子内に形成されるジスルフィド結合がどのシステイン間に形成されているのかを明らかにした。そのためには、Impの点変異体と生化学的手法を利用した。この知見はImPにおけるジスルフィド結合形成を理解する上で必須の情報であり今後の解析において重要になってくる。
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