研究概要 |
本研究では、A. nidulansを対象としてO-結合型糖鎖伸長に関与する糖転移酵素を同定し、その機能を明らかにすることを目的として以下の研究を行った。 (1) α-mannosyltransferase(MntA, MntB, MntC)の機能解析 小胞体でO-結合型マンノース糖鎖付加された糖タンパク質へ、ゴルジ体でさらにマンノース転移反応を触媒すると推定されるMntの局在性を調べた。各mnt遺伝子にGFPタグを付与した融合遺伝子を構築し、A.nidulansへ導入した。mntB-gfp融合遺伝子導入株でのみ融合タンパク質が発現した。蛍光顕微鏡観察によりMntB-GFPがゴルジ体に局在することが明らかになった。ついでA.nidulansの野生株、mntA-、mntB-、mntC-破壊株を120℃で90分オートクレーブ処理し、全糖タンパク質を抽出した。そのO-結合型糖鎖を切り出し、糖を蛍光標識し、HPLCにより糖鎖を分離した。マンノースに対する二糖糖鎖の量を比較した結果、野生株よりもmntA-及びmntC-破壊株では二糖の量が減少していた。従ってMntA及びMntCはO-結合型糖鎖の2番目の糖の転移に関与することが示唆された。 (2) α-galactosyltransferase(Gct)の同定と機能解析 A.nidulansゲノムデータベースより、ガラクトース糖鎖修飾で知られている分裂酵母のα-galactosyltransferase遺伝子と約30%の相同性を示す配列AN7652.3、AN1969.3、AN10041.3を見出し、それぞれgctA、gctB、gctCとした。A.nidulansで3つのgct遺伝子の破壊株を構築したが、いずれの破壊株も野生株との生育、形態、薬剤感受性等の表現型の相違は観察されなかった。従って各Gctはガラクトースではない他の糖鎖付加に関与しているか、あるいはガラクトース糖鎖はA.nidulansの生育には重要ではないことが明らかになった。
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