研究概要 |
本研究では、糸状菌Aspergillus nidulansを対象としてO-結合型糖鎖伸長に関与する糖転移酵素を同定し、その機能を明らかにすることを目的する。A.nidulansのα-mannosyltransferaseをコードすると推定されるmntA、mntB、mntC遺伝子を出芽酵母のα-1,2-mannosyltransferase (kre2、ktr1、tr3)3重破壊株に導入した。さらにO-結合型糖鎖が高度に付加されることが知られているキチナーゼ遺伝子(CTS1)を上記の3種のmnt発現酵母菌へ導入した。その結果、3種のmnt発現株とmnt非導入株とて生産されたCTS1pの糖鎖付加量に相違がなかった。次にA.nidulansのmnt破壊株に、O-結合型糖鎖が高度に付加されることが知られているA.awamoriグルコアミラーゼ遺伝子(glaA)を導入した。各mnt破壊株と野生株で生産されたGlaAとで分子量に差はなかった。以上の結果から、A.nidulansの3種のMntはO-結合型糖鎖修飾には関与していない可能性が示唆された。 ついで、A.nidulansの野生株及び各mnt破壊株から細胞壁糖鎖(ガラクトマンナン)が付加した糖タンパク質を抽出し、β-1,5-ガラクトフラノースを認識する抗体を用いたイムノブロットを行った。細胞壁のガラクトフラナンはα-1,2-結合したマンナン主鎖の非還元末端付近で分岐状に付加している。野生株由来の細胞壁タンパク質からは抗体と反応するシグナルを得たが、mntA及びmntC破壊株ではシグナルは完全に消失し、mntB破壊株ではシグナル強度が著しく減少した。以上の結果から、mntはAspergillus属糸状菌に独特な細胞壁のガラクトマンナンのマンナン部分の合成に関与していることが示唆された。
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