本研究では、海藻等のバイオマス資源を分解する極限環境微生物を探索、単離し、それらの分解機構の解明と利用技術の開発を目指した。 長崎近海で収集した各種試料から、有用糖質(デンプン、セルロース、アルギン酸等)を炭素源として合計221株を分離した。得られた菌株をそれぞれの糖質分解能確認用寒天培地で増殖させた後、コロニー周囲におけるハロー形成の有無を指標に分解能を持つ菌株の選択を進めた。その結果、デンプン分解能を示す株119株、CMC分解能を示す株117株、アルギン酸分解能を示す株39株、キシラン分解能を示す株10株、寒天分解能を示す株1株得られた。 この内、143株について分子系統解析を行った。CMC分解菌はBacillus sp.やExiguobacterium sp.、Halomonas sp.等の細菌14属36種に分けられ、大きく分類してファーミキューテス門に属する細菌が多かった。特に、Oceanobacillus iheyensisやHalolactibacillus miurensis、Halomonas variabilisの近縁菌が強い分解能を持つことが明らかにされた。また、アルギン酸分解菌はBacillus sp.やHalomonas sp.、Vibrio sp.等の細菌8属22種に分けられ、大きく分類してプロテオバクテリア門に属する細菌が多かった。特に、Halomonas venustaやHalomonas aquamarinaの近縁菌が強い分解能を有すると示唆された。現在、他の菌についても同様な解析を進めている。
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