研究概要 |
本研究では、リコンビナントキチナーゼを過剰分泌するキチンオリゴ糖非資化性大腸菌を作成し、それを粉末キチン添加培地中で培養することで発酵法によるキチン分解を行い、効率的にキチンオリゴ糖を製造する要素技術の開発を試みている。本研究は、様々な有用生理活性を有するキチンオリゴ糖を安価にかつ環境に負荷のかからない方法で得るため、未だ成功していないバイオマスキチンの酵素糖化を実現するための重要な研究である。 平成22年度年度は、1,キチンオリゴ糖に特異的なトランスポータタンパク質(PTS)遺伝子をλファージRed recombinaseを利用したOne-step inactivation methodによりノックアウトしたB株由来の宿主大腸菌[E.coli BL31(DE3)]の作成、2,作成した宿主大腸菌へのリコンビナントキチナーゼ生産・分泌用ベクター(pVP-Chi)の導入と組換え菌のキチナーゼ生産条件についての検討、3,作成した遺伝子組換え大腸菌のキチンオリゴ糖資化能の調査、および4,本遺伝子組換え大腸菌を用いた発酵法によるキチンの糖化の各項目について実験を行なった。 その結果、PTSノックアウト宿主大腸菌の作成と本菌へのpVP-Chiの導入に成功した。本菌についてジアセチルキトビオース(GlcNAc_2)の資化性を調べたところ、ワイルドタイプに比べ資化性は低下したが、長時間培養ではGlcNAc_2を資化してしまうことが分かった。また、キチンの糖化実験の結果でも、ワイルドタイプに比べると良好な結果ではあったが、やはりキチンは分解するものの培地中へのGlcNAc_2の蓄積量は決して多くはなかった。 現在、K株由来の宿主大腸菌[E.coli HMS174(DE3)]のGlcNAc_2資化能が大変低いことを見出しており、平成23年度は本大腸菌を用いて前述の実験を行なうことを計画している
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