以下の3項目の研究を実施した。 1.遺伝子破壊と中間代謝産物の解析:放線菌(Streptomyces reveromyceticus)から同定したリベロマイシン生合成遺伝子クラスター中の未知遺伝子を解析するために、λRedシステムを用いて21個の遺伝子破壊ベクターを調製し、各遺伝子破壊株の構築と蓄積する代謝産物の解析を行った。新たに注目したRevG遺伝子破壊株から、ポリケチド合成酵素により生成すると考えられるRM-A1aが蓄積することを見出した。ポリケチド鎖修飾以前の生合成鍵中間体と考えられることから、RM-A1aを起点とした生合成解析が重要である事が示唆された。さらに、各種の遺伝子破壊株を解析した結果、不安定中間体を経由する生合成ステップが見出されたことから、遺伝子破壊株の解析に加えて、生化学的解析が生合成機構の解明に必須である事が予想された。 2.生化学的解析:フラビン(FAD)依存酸化酵素機能解明に向けて、大腸菌を用いた異種発現系を詳細に検討したところ、発現が困難であったFAD依存酵素の可溶化と精製酵素の調製に成功した。さらに、遺伝子破壊株を用い隔た生理的基質の調製を進め、反応機構を解析する基盤を構築した。脂肪酸-ポリケチドハイブリット形成に必要な鍵酵素について、酵素化学的性質を詳細に検討し、不飽和脂肪酸特異的に反応を行うことが出来る脂肪酸-CoAリガーゼ機能を明らかにした。 3.X線結晶解析情報を基にした新規酵素反応の創出 P450-リベロマイシンEの共結晶解析データを利用して、新規誘導体創製に向けた部位特異変異導入を進めた。また、脂肪酸-CoAリガーゼの精製条件及び結晶化条件の検討を進めた。
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