1.遺伝子破壊と中間代謝産物の解析:リベロマイシン生産菌から同定したリベロマイシン生合成遺伝子クラスターの機能解析に向けて全遺伝子の破壊株を作製し、蓄積した中間代謝産物の単離・構造解析を行った。これにより生合成経路を推定するために必要な多くのリベロマイシン類縁体の構造が明らかとなった。一方、不安定な中間体を経由する場合には代謝中間産物の特定が困難であることから、異種発現酵素を用いて反応を解析した。その結果、RM-A1a(トリオール中間体)を基質としてジヒドロキシケトン合成酵素(RevG)及びスピロアセタール環化酵素(RevJ)により立体特異的にスピロアセタール環を形成することが明らかになった。これまでに非酵素的に進行すると考えられてきた脱水環化反応に酵素が関与することが初めて示された。立体特異的スピロアセタール化合物を化学合成することは困難であるため、RevG及びRevJを用いた酵素的合成法は新規化合物創製につながる。 2.生化学反応の解析:異種発現が困難であったフラビン(FAD)依存酵素の可溶化条件を更に検討した。大腸菌のコドン使用頻度を考慮した人工DNAを用いることにより、FADが結合した高活性の酵素を調製し、酸化反応を解析することに成功した。脂肪酸-ポリケチドハイブリット形成に必要な鍵酵素(脂肪酸-CoAリガーゼ)を調製し、飽和及び不飽和脂肪酸を用いて基質特異性を明らかにした。 3.X線結晶解析:P450の結晶構造をもとにしてアミノ酸の部位特異的変異導入を行った。変異導入後の活性減少が問題であり、活性を損なわない部位への変異導入を検討した。FAD依存酵素、脂肪酸-CoAリガーゼについては、結晶解析に適した、良好な結晶の創出に向けた条件を検討した。 以上、基盤研究(C)補助金を得ることによりリベロマイシン生合成について飛躍的な研究成果を上げることが出来た。
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