本研究は、細菌におけるタンパク質アセチル化の意義を解明することを目的として、アセチル化タンパク質の網羅的探索、アセチル化の役割、アセチル化関連酵素の機能解析を行う。本年度は枯草菌(Bacillus subtilis)を対象に、プロテオミクスによるアセチル化タンパク質の探索と脱アセチル化酵素遺伝子欠損株の作成を行った。枯草菌粗タンパク液に対し抗アセチルリジン抗体を用いた免疫沈降を行い、SDS-PAGEで展開し、免疫沈降に用いたのと同じ抗体を用いたウェスタンブロットによる確認後、該当するタンパク質バンドを切り出し、LC-MS/MS解析によるタンパク質同定を行った。その結果、17のアセチル化候補タンパク質と4つのアセチル化候補部位を見いだした。その中には、代謝酵素、翻訳関連因子、シャペロン等が含まれていた。各候補タンパク質についてアフィニティータグを付加した融合タンパク質を発現させる枯草菌株を作成し、タグ認識抗体による免疫沈降と抗アセチルリジン抗体によるウェスタンブロットを行った結果、8つの候補タンパク質についてアセチル化を確認することができた。 枯草菌ゲノムには、真核生物のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)のホモログとしてAcuCとYhdZが存在する。acuC及びyhdZ単独欠損株と二重欠損株を作成し表現型を検討した。LB及び2xSG胞子形成での増殖及び胞子形成能は、野生株と比べて差はなかった。作成したHDACホモログ二重破壊株と野生株において、上記の候補タンパク質のアセチル化レベルを比較したところ、すでにアセチル化を受けることが知られているアセチルCoA合成酵素(AcsA)について二重破壊株でのアセチル化レベルの上昇が確認されたが、今回同定した8つのアセチル化タンパク質については差が見られなかった。培養条件を変更して、さらにアセチル化レベルの違いについて検討していく予定である。
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