細菌におけるタンパク質(リジン)アセチル化の意義の解明を目的として、グラム陽性のモデル細菌である枯草菌を対象に、アセチル化タンパク質の網羅的同定(アセチローム解析)、アセチル化の役割、アセチル化関連酵素の機能解析を行っている。本年度は、アセチローム解析の完了と主要なアセチル化タンパク質p47の解析を進めた。前年度の方法を改良し、アセチルリジン抗体で免疫沈降したトリプシン消化ペプチドをLC-MS/MSで分析することにより、直接的なアセチル化部位の同定を試みた。その結果、120の枯草菌由来タンパク質に一致する145のアセチル化部位を同定した。同定されたアセチル化タンパク質の中には、代謝酵素や翻訳関連因子のほか、必須タンパク質も含まれていた。これらのタンパク質の機能にアセチル化がどのような意義を持つのかを、今後明らかにしていく予定である。代表的な翻訳後修飾であるリン酸化プロテオームと比較すると、枯草菌では約80のリン酸化タンパク質が同定されており、アセチル化はリン酸化よりもメジャーな翻訳後修飾であると考えられた。 枯草菌全タンパク質試料を用いたウェスタンブロット解析から、対数増殖期で強くアセチル化され、対数増殖期以降アセチル化レベルが低下する47kDaタンパク質(p47)を見いだした。MSを駆使した解析から、p47はある翻訳関連因子と推定された。脱アセチル化酵素二重欠損株(ΔacuC ΔsrtN)において、p47のアセチル化レベルは対数期以降も維持されており、p47の脱アセチル化にAcoC/SrtNが関与することが示唆された。
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