研究概要 |
細菌におけるタンパク質(リジン)アセチル化の意義の解明を目的としている。前年度までに、枯草菌の対数期で強くアセチル化されるタンパク質(p47)を見出した。MS解析及び特異的抗体を用いた解析から、p47タンパク質は翻訳伸長因子EF-Tu(TufA)であると同定した。EF-Tuは定常期に入ると脱アセチル化され、クラス1,2型脱アセチル化酵素AcuCとクラス3型脱アセチル化酵素SrtNの両方がEF-Tuの脱アセチル化に関わることを明らかにした。枯草菌には46のアセチル化酵素の候補が存在する。それらの破壊株を用いてEF-Tuのアセチル化酵素を探索したところ、複数のアセチル化酵素がEF-Tuのアセチル化に関与することが示唆された。また、EF-Tuのアセチル化はMM-グルコースやL培地で起こるが、MM-コハク酸やMM-クエン酸培地では検出されず、栄養条件によって制御されると考えられた。 コリネバクテリウム菌は、旨み成分であるL-グルタミン酸の発酵生産に利用される細菌である。グルタミン酸過剰生産時の代謝変換に関わるタンパク質アセチル化を明らかにする目的で、アセチローム解析を実施した。その結果、約60のアセチル化タンパク質を同定し、その中にはグルタミン酸生産に関連する代謝酵素も含まれていた。特に、グルタミン酸生成と関連が深い2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体サブユニットにアセチル化を見出した。
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