研究課題
これまで深海サンプルから分離した生分解性プラスチック分解菌の分類学的検討を行った結果、2種好圧菌分離株が新種として同定され、それぞれ、Moritella polymerulytica sp.nov.,JT01, Moritella Kaikoae sp.nov.,JT4と命名した。これらの新規分離株のうち、JT01株において、強力なポリカプロラクトン(PCL)分解活性が見られたことから、以後の研究は本分離株を中心に検討を行った。次に「連続加圧培養評価装置」による連続培養実験について検討を行った。本装置は、加圧ラインや、連続培養用の加圧容器などは、オートクレーブ、薬剤などで滅菌処理が可能であるが、加圧の電動ポンプ駆動部分における完全滅菌は困難であった。培養実験では、本駆動部分からの微生物のコンタミがみられたが、低温室において装置を稼働させることにより約3週間までなら、コンタミの影響を無視して培養できることを見いだした。現在、PCL分解能を持つ分離株を用いて、本装置による効率的な生プラマテリアルの分解実験を試みている。また、本分離株からPCL分解活性を有するエステラーゼ酵素の完全精製を行い、各種の生理・生化学的な性質を決定した。その結果、本酵素は150MPaにその活性の至適を有する好圧酵素であることが明らかとなり、大気圧下では50℃に至適を持つ、低温でも充分活性の高い新規の酵素であることが示された。また、本酵素は通常の市販されている同様な酵素と比較して耐熱性も高く、低温でも働く耐熱・耐圧性酵素であることが明らかとなった。こうした性質は、動向その応用面から有利であると考えられ、将来の応用への利用が期待される。今後、本精製酵素のN末端アミノ酸配列を決定し、得られた情報から遺伝子の取得を試みる予定である。
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