cGMPとNOは多くの植物遺伝子の発現を調節するが、cGMP/NOのシグナル伝達機構と遺伝子発現調節機構は不明である。今年度は。転写調節におけるcGMPとNOの相関、NO/cGMPシグナル伝達の標的転写因子の同定等に焦点を絞り、以下の研究を実施した。 1)シロイヌナズナのニコチアナミン合成酵素遺伝子(AtNAS1)とフェリチン遺伝子(AtFER1)のプロモーター中にcGMPおよびNO応答性領域を同定した。特にAtNAS1プロモーター中のNO応答性シスエレメントを13塩基に絞り込みこの配列に結合する転写因子を推定した。両遺伝子ともcGMP応答性配列とNO応答性配列が異なっていたことからこれらの遺伝子発現を調節するcGMPとNOのシグナル伝達経路も互いに異なることを推定した。 (2)AtFER1プロモーターとホタルルシフェラーゼ遺伝子(LUC)の融合遺伝子を高発現するシロイヌナズナT87細胞形質転換株を確立し、NOとcGMP処理によるLUC活性の上昇を認めた。薬理学的な実験により、NOとcGMPのシグナル伝達経路が異なることを示した。 (3)ダイズのカルコン合成酵素遺伝子(CHS8)の発現がcGMPにより約10倍に増加すること、この反応に新たなタンパク質合成を必要としないことを定量的RT-PCRで示した。 (4)ダイズのMYB転写因子GmMYB176によるイソフラボン合成系酵素発現の促進とcGMPシグナル伝達経路の関連を一過的遺伝子発現系で解析したが、両者が関連していることを示す結果は得られなかった。 (5)以上の結果明らかになったcGMP/NO応答性シス配列やその配列に結合することが推定される転写因子に関する知見を総合して、植物遺伝子発現調節におけるcGMP/NOの役割を考察した。
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