研究概要 |
遺伝子組換え技術によって,天然には極微量しか存在しない蛋白質の生産が可能になったが,発現産物が可溶性画分に回収できない場合が少なくない。本研究では,フォールディングを触媒するジスルフィド形成/修復酵素の酸化還元電位と速度論的解析を行った。大腸菌DsbAの活性中心配列Cys-Pro-His-CysのPro-Hisをランダムなジペプチド配列に交換したDsbA[CxxC]ライブラリを構築した。新規DsbA[CXXC]について酸化還元電位とin vivo活性をプロットした結果,両者の間には直線的相関は認められずDsbAが触媒するS-S架橋形成が「平衡論支配」ではないことが示唆された。高度好熱菌のゲノム中にコードされているDsbAホモログ遺伝子としてTthA0610とTthA1422が存在する。これらの遺伝子を大腸菌で発現させるために,両蛋白質のN末端シグナル配列を大腸菌DsbAのシグナルペプチド配列に交換した発現系を構築した。ペリプラズム空間から回収したTthA0610では設計した位置で切断された成熟体が得られた。TthA1422はN末端にAla-Alaの余分な2アミノ酸残基を残して切断された。TthA0610とTthA1422の酸化還元電位測定は,それぞれ-161mV,-157mVを示した。この電位は大腸菌ジスルフィドイソメラーゼであるDsbCに相当した。TthA0610とTthA1422は同じ活性中心配列[CPYC]を持ち,ほぼ同じ電位を持つ。両蛋白質は競合するよりもむしろ協調して蛋白質の正しい構造の維持に機能する可能性が高いと考えられる。22年度は計画どおりに実験をすすめることが出来たといえる。
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